0. はじめに
借金返済が困難になってしまった場合、自己破産という債務整理の方法があります。
自己破産を裁判所に申し立てると、借金の返済義務が法的に免除され、原則として借金はゼロになります。
それでは、過去に自己破産をしたことがある人が、もう一度自己破産をすることはできるのでしょうか?
新型コロナウィルスの影響により、やむを得ず多額の借金を負ってしまうなど、2回目の自己破産を検討せざるを得ない方もいらっしゃるかと思います。
そこで今回のコラムでは、2回目の自己破産は可能であるのか、手続き上の注意点など弁護士がわかりやすく解説します。
1. 2回目の自己破産は可能なのか
自己破産をする場合、もう二度と同じ過ちを繰り返さないことを誓って、裁判所から免責を認めてもらいますので、2回目の自己破産は認められないと思っている方も多いかもしれません。
しかし、結論から言うと、2回目の自己破産は可能です。それどころか、破産法には自己破産の回数を制限する規定はありませんので、何度でも自己破産を申し立てることができます。
ただし、2回目の自己破産は、1回目の自己破産と比べると、裁判所の審査は一段と厳しくなりますし、手続きに必要な費用の負担も重くなります。
2. 2回目の自己破産が認められるためには
(1)前回の免責確定日から原則として7年経過していること
再度の自己破産が認められるためには、前回の免責確定日から原則として7年が経過していることが必要です(破産法第252条1項10号)。
もしも、7年以内に自己破産を再度申し立てた場合、免責不許可事由に該当するため、借金の返済義務は免責されません。
ただし、7年が経過する前でも、病気・事故・失業など自己破産をするべき止むを得ない事情がある場合は、裁判所が裁量免責により借金の返済義務を免除する可能性もあります。
裁量免責というのは、免責不許可事由に該当しても、債務者の様々な諸事情を考慮して、裁判所が免責を許可する仕組みです。
なお、免責確定日を調べるには、自己破産を申し立てた裁判所へ「免責許可決定確定証明書」を発行してもらうことで確認することができます。
(2)自己破産の原因が前回とは異なること
2回目以降の自己破産については、1回目の自己破産の場合よりも、裁判所に免責を認めてもらうのが厳しくなります。
具体的には、前回と同じ理由で借金返済が困難となり、自己破産に至ってしまった場合、「十分に反省していなかった」「今後も自己破産を繰り返すかもしれない」とみなされ、免責許可に対して厳しく判断されることになります。
特に、競馬やパチンコなどのギャンブルや浪費による借金が原因で自己破産してしまった人は注意が必要です。
ギャンブルや浪費は、免責不許可事由(同法252条1項各号)に該当しますが、1回目の自己破産では、ほとんどのケースで裁量免責が認められます。
しかし、2回目以降の自己破産では、免責不許可事由を厳しくチェックされ、裁量免責が認められるのが難しくなります。
主な免責不許可事由(免責が認められなくなる事情) |
---|
|
3. 2回目の自己破産は管財事件になる可能性が高い
自己破産は、必要最低限の財産以外はすべて処分・換金され、債権者に平等に分配する手続きです。
そして、自己破産の手続きは、同時廃止事件と管財事件の2種類があります。
1回目の自己破産では、同時廃止事件になることが多いです。
しかし、2回目以降の自己破産では、より慎重な調査や厳格な手続きが必要になるため、財産の有無に関係なく、管財事件として取り扱われる可能性が高くなります。
そのため、同時廃止事件と比べて、費用・手間・時間がかかります。
同時廃止事件 | 処分する財産がないことや免責不許可事由がないことが明らかな場合、破産手続きの開始と同時に手続きの廃止(終了)が決定されます。 そのため、破産手続きに必要な費用は安くなります。 |
---|---|
管財事件 | 破産者の財産管理や処分を行う破産管財人が選任されて、破産手続きが進められます。同時廃止にはなかった債権者集会も開かれます。 破産管財人は、詳細な経緯説明を求めたり、適切な家計管理を指導したり、免責が妥当か否かを調査して裁判所に意見もします。 引継予納金という費用が別途必要になるため、破産手続きの費用は高くなります。 |
4. 裁判所から免責が認められるには
(1)やむを得ない事情があること
2回目以降の自己破産が認められるためには、再び自己破産をするに至ったことをもやむを得ないと裁判所に納得してもらう立証が必要です。
たとえば、仕事も真面目に慎ましく生活していたが、病気や事故、家族の介護、コロナ不況によるリストラなどで借金が膨らんだ場合、やむを得ない事情であると判断されやすくなります。
(2)再度の自己破産を真摯に反省していること
裁判官と面接する債務者審尋や免責審尋において、再び自己破産することを真摯に反省する態度を示さなければなりません。
自己破産により借金の返済義務が免責されると、債権者は非常に大きな不利益が生じます。
そのため、自己破産の手続きでは、二度と自己破産することのないよう十分に反省することが求められます。
にもかかわらず、再び自己破産をするというわけですから、裁判官に対して真摯に反省し、誠実な態度で接しなければなりません。
5.自己破産を申し立てても免責許可が下りなかった場合
2回目の自己破産を申し立てたものの免責許可が下りなかった場合、免責不許可後1週間以内であれば、即時抗告により異議を申し立てることができます。
即時抗告とは、裁判所による決定や命令に対して、その上級の裁判所に再判断を仰ぐ不服申立手続きです。
たとえば、東京地方裁判所の免責不許可決定に対しては、東京高等裁判所の再判断を仰ぐことになります。
ただし、即時抗告をしたとしても、免責許可が下りない場合もあります。
6. 2回目の自己破産が難しいときの対応策
前回の自己破産から7年以内であったり、免責不許可事由に該当する場合でも、借金の整理を諦めないでください。
2回目以降の自己破産で免責が認められる可能性が低い場合は、自己破産以外の債務整理の方法があるからです。
(1)任意整理
裁判所を通さずに、消費者金融やクレジットカード会社、銀行などの債権者との交渉により、借金の減額や月々の返済金額の負担を軽くする手続きです。
任意整理は、利息や遅延損害金の免除による借金の減額や長期分割払いを目指しますが、元本の返済義務がなくなるわけではありません。
そのため、元本を返済できるだけの継続的な収入を得ている必要があります。
また、自己破産や個人再生のように官報に掲載されませんし、手続きをする債権者を選ぶこともできます。
(2)個人再生(民事再生)
自己破産と同じように裁判所を利用した手続きです。個人再生が認められると、原則として借金の金額が1/5~1/10まで減額され、3年(最長5年)かけて分割返済することになります。
個人再生の最大のメリットは、住宅ローン特則(住宅資金特別条項)を利用することにより、マイホームを維持したまま、無理なく借金を返済できることです。
ただし、個人再生の手続きの中でも、サラリーマンや公務員が利用する給与所得者等再生については、自己破産の免責確定後7年間は利用できないという制限があるので、注意が必要です。
7. 2回目の自己破産も弁護士に相談
このように、2回目以降の自己破産は、免責を得るための条件が厳しくなります。
再び自己破産できるかどうかは、今後の人生を大きく左右する問題です。
失敗しないためにも、自己破産の手続きに強い弁護士に相談してください。
弊事務所では、自己破産をはじめとする、数多くの債務整理を手掛けてきた豊富な経験と実績があります。もちろん、2回目の自己破産を成功させた実績は幾つもあります。
仮に2回目以降の自己破産が難しい場合であっても、お一人ひとりの現状にあった適切な債務整理の方法を提案することができます。
借金返済にお悩みの方は、どうぞ遠慮なくご相談ください。債務整理のご相談は何度でも無料です。