- 0. はじめに
- 1. 医療ローンとは
- 2. 医療ローンのメリット
- 2-1. 手元に資金がなくても医療を受けられる
- 2-2. ほかのローンに比べて金利が低めに設定されている
- 3. 医療ローンのデメリット
- 3-1. 利息が発生する
- 3-2. 審査に通らないと利用できない
- 3-3. 融資までは自分で費用を負担する必要がある
- 3-4. 転院する場合は全額返済を請求されることもある
- 4. 医療ローンが払えないと起こること
- 4-1. 遅延損害金の発生
- 4-2. 電話や書面による督促
- 4-3. 残額も含めて一括請求される
- 4-4. 訴訟を提起される
- 4-5. 差押え
- 5. 支払いできない時の対処法
- 5-1. 契約から8日以内ならクーリング・オフ
- 5-2. 契約から8日を超えたら中途解約
- 6. すでに滞納している場合は債務整理を検討
- 6-1. 任意整理
- 6-2. 個人再生
- 6-3. 自己破産
- 7. 債務整理の注意点
- 8. 医療ローンの返済を弁護士に相談するメリット
0. はじめに
SNSや街頭などで美容整形、医療脱毛、歯列矯正といった美容医療に関する広告を見かける機会が増え、美容への関心が高まっていることが伺えます。
コロナ禍でマスク生活や在宅勤務が続き、「治療後のダウンタイムを気にしなくてもよい」「人に顔を見せなくてよい」などの理由から美容医療に興味を持つ人も増えているようです。
一方で、「早くきれいになりたい」と焦る気持ちから、高額な契約をするケースも少なくありません。
手元に十分な資金がない場合、医療ローンを利用することで、毎月返済しながら高額な施術を受けられます。
しかし、あくまでも医療ローンは借金なので、返済できないと多くのリスクを負う点に注意が必要です。
この記事では、高額な医療ローンを契約したものの、返済ができなくなった場合の対応方法などを、弁護士が詳しく解説します。
1. 医療ローンとは
医療ローンは、保険適用外である自由診療など、高額な治療や施術を受けるような場面で利用できるローンです。「メディカルローン」や「美容ローン」、「エステローン」など、サービスに応じてさまざまな呼び方があります。
たとえば、次のような治療や施術を受ける際に用いられます。
- 美容整形
- 医療脱毛
- 痩身エステ
- レーシック治療
- AGA治療
- 審美歯科
- 先進医療
- 不妊治療 など
基本的には病院、クリニックと提携している金融機関から借入れを行います。
利用目的を限定する目的別ローンの一種なので、通常のローンよりも金利が低く抑えられていることが特徴です。
2. 医療ローンのメリット
自由診療は高額な治療費がかかる場合がありますが、医療ローンを利用することで手軽に治療を受けられます。
医療ローンの利用には、次のようなメリットがあります。
- 手元に資金がなくても治療を受けられる
- ほかのローンに比べて金利が低めの設定にされている
2-1. 手元に資金がなくても医療を受けられる
保険が使える治療(保険診療)は、治療費の自己負担が1~3割に抑えられます。
しかし、保険適用外である自由診療は全額が自己負担となり、内容によっては数十万円から数百万円の費用がかかるケースがあります。
この点、医療ローンを利用することで、一括で支払える資金がなくてもすぐに高額な治療を開始することができます。
お金を貯めている間に治療を開始するのに適切な時期を逃してしまうことも防げるため、利用者にとっては利便性が高いローンといえます。
2-2. ほかのローンに比べて金利が低めに設定されている
医療ローンは目的別ローンの1種です。
目的別ローンは、使途が特定の目的に限定されたローンのことで、マイカーローンや住宅ローン、教育ローンなどさまざまな種類があります。
目的別ローンは使える目的が限定される分、カードローンやフリーローンに比べて金利が低めに設定されています。
そのため利息分の負担が少なく、返済総額を抑えることができます。
3. 医療ローンのデメリット
医療ローンのデメリットをきちんと理解しないまま契約すると、返済が困難になる可能性があります。利用する際はデメリットをしっかり把握しておきましょう。
具体的には次のようなデメリットがあります。
- 利息が発生する
- 審査に通らないと利用できない
- 融資までは自分で費用を負担する必要がある
- 転院する場合は全額返済を請求されることもある
3-1. 利息が発生する
医療ローンは目的別ローンのため低金利ではありますが、利息が発生します。
借入期間に応じて算出された利息を、元本とあわせて返済する必要があるので、ローンを利用しない場合よりも最終的な支払い総額は多くなります。
3-2. 審査に通らないと利用できない
医療ローンを利用するためには、申込みを行なって審査に通らなければなりません。そのため、即日融資を受けることは難しいです。
審査では、返済能力やほかの金融機関からの借入れ状況といった点を、信用情報機関への照会などを通じて調査されます。
過去に借金を滞納したり債務整理を行なったりしたことで、事故情報が登録されている(いわゆるブラックリストに載っている)場合、審査に通らない可能性もあります。
3-3. 融資までは自分で費用を負担する必要がある
医療ローンの審査は1~2週間程度かかるケースが多いです。
審査を受けている間に費用が必要になった場合は、自己負担しなければなりません。
3-4. 転院する場合は全額返済を請求されることもある
医療ローンを利用して病院に通っている途中に、病院側の対応に不満を感じるなどして、ほかの病院に変更したいと考えることもあるでしょう。
しかし、転院してもローンの契約内容が自動的に変更されるわけではありません。契約内容によっては、借金の残額の返済を一括で請求される可能性もあります。
転院する見込みがあるのであれば、医療ローンの利用は控えたほうがよいでしょう。
4. 医療ローンが払えない場合のリスク
医療ローンの返済を滞納すると、さまざまなリスクが発生するため、きちんと返済することが重要です。
4-1. 遅延損害金の発生
返済が1日でも遅れると、返済期日の翌日から実際に支払いを行なった日までの日数に応じて遅延損害金が発生します。
また、遅延損害金の利率は、利息の上限利率の1.46倍が上限です(利息制限法第4条1項)。そのため、通常の利息よりも高額になることが一般的です。
4-2. 電話や書面による督促
医療ローンを滞納すると、ローン会社から返済を求める電話がかかってくることがあります。
連絡を無視して支払いを滞納した状態でいると、返済を求める督促状や催告書などの書面が自宅に届きます。
4-3. 残額も含めて一括請求を受ける
一定回数以上、滞納を繰り返したり、滞納金額が一定額に達したりすると、残高も含めて一括返済を求められるという条項が医療ローンの契約内容に設けられていることが一般的です。
そのため、電話や書面による督促を放置したままでいると、ローン会社から一括返済を求める内容証明郵便が送られてきます。
4-4. 訴訟を提起される
一括返済を求められても放置していると、ローン会社は残額を回収するため、訴訟や支払督促の提起など、裁判所を通じた手続きに移行します。
裁判所での手続きが始まると、債務者に「訴状」や「支払督促」などと書かれた裁判所からの書面が届きます。
裁判所からの書面にも対応しないでいると、ローン会社の言い分のみが認められた「判決」や「仮執行宣言付支払督促」が出されます。
4-5. 差押え
判決や仮執行宣言付支払督促が出されると、ローン会社は裁判所に差押えを申立てます。
そして、訴訟の段階でローン会社の主張が認められているとして、財産の差押えが認められます。
差押えの対象になるのは、給与や預貯金です。差押えは、未払いが解消されたり、満額を回収できたりするまで、繰り返し行われる可能性もあります。
また、給与が差押えられる場合、勤務先に対して取り立てを行うので、医療ローンを滞納していることが職場に知られたり、勤務先に手続きなどの迷惑をかける可能性があります。
5. 支払いできない時の対処法
病院やクリニックでの雰囲気にのまれて高額な医療ローンの契約をしたものの、返済が難しいので契約を取り消したいという方もいるでしょう。
取消しの方法は、契約からの日数によって異なります。
5-1. 契約から8日以内ならクーリング・オフ
美容医療サービスやエステに関する契約は、法的に不備のない契約書面を受領した日を含めて8日以内であれば、クーリング・オフにより契約を解除することができます。
クーリング・オフとは、契約の申込み後や締結後でも、一定期間であれば申込みの撤回や契約の解除ができる制度です。
ただし、どのような契約でもクーリング・オフができるわけではありません。
美容医療やエステに関する契約では、サービスの提供期間が1か月を超え、金額が5万円を超える場合に対象となります。
クーリング・オフにより契約を解除したい旨を記載した通知書を作成し、郵送したりメールで送ったりすることで、クーリング・オフをすることができます。
5-2. 契約から8日を超えたら中途解約
クーリング・オフが可能な8日間を過ぎてしまった場合でも、契約期間内であれば中途解約できる場合があります。
ただし、中途解約ができるのは、クーリング・オフと同様に、サービスの提供期間が1か月を超え、金額が5万円を超えることが条件です。
また、違約金や解約手数料を支払う必要があります。
美容医療サービスを中途解約する場合、違約金や解約金の上限が法令により次のように定められています。
- サービスの提供前:2万円
- サービスの提供後:「すでに提供されたサービスの料金+5万円」または「未提供のサービスに関する料金の20%相当額」のいずれか低い方
すでに支払った金額が上記の金額を上回る場合は返金してもらうことができ、不足している場合は追加で支払う必要があります。
サービスの提供期間が1か月を超え、金額が5万円を超える内容に合致しない契約(特定商取引法による規制に該当しない契約)の場合、病院やクリニックが定めるルールに従う必要があります。
そのため、中途解約ができる条件や違約金・解約金について、契約前にきちんと確認しておきましょう。
6. すでに滞納している場合は債務整理を検討
すでに医療ローンを滞納しており、今後も返済が困難な場合は、すぐに債務整理の手続きを行うことをおすすめします。
債務整理をすることで借金を減額したり、返済自体が免除されたりします。
また、手続きを開始することで、返済を求めるローン会社からの連絡もストップします。
債務整理の手続には、大きく「任意整理」「個人再生」「自己破産」の3種類があります。
6-1. 任意整理
任意整理は、無理なく借金を返済できるよう、弁護士がローン会社と返済条件の変更について交渉する手続きです。
たとえば、返済期間を延長して毎月の返済額を減らすことや、借金の完済までに発生する予定の将来利息や遅延損害金をカットすることなどを求めます。
ローン会社が交渉に応じれば、返済の負担を軽減することができます。
また、個人再生や自己破産は、借り入れがあるすべての金融機関を対象に手続きをしますが、任意整理は手続きの対象を選択することができます。
複数の金融機関から借入れている場合、医療ローン以外の借金を任意整理の対象にして、医療ローンは手続きの対象外とすることも可能です。
医療ローン以外の借金を任意整理することで、医療ローンの返済を続けられるのであれば、任意整理の手続き開始後も治療や施術を受けることが可能です。
6-2. 自己破産
自己破産は裁判所に申立てを行い、免責が認められると借金の支払い義務が免除される制度です。つまり、医療ローンの残金を返済する必要がなくなります。
ただし、自動車や不動産など、価値のある財産を処分する必要があるほか、警備員や生命保険募集人など、一定の職業に就けないといったデメリットがあります。
6-3. 個人再生
個人再生は裁判所に申立てを行い、再生計画の認可を受けることで借金の大幅な減額と、原則3年(最長5年)での分割払いが認められる制度です。
任意整理とは異なりすべての借金が手続きの対象となりますが、任意整理よりも借金の減額幅が大きいのが特徴です。
また、自己破産のように借金が免除されるわけではありませんが、価値のある財産を処分する必要もありません。
7. 債務整理の注意点
債務整理を行うと、「債務整理を行なった」という情報(事故情報)が、信用情報機関に登録され、俗にいうブラックリストに載った状態となります。
登録期間は5年~10年程度といわれており、その間はクレジットカードの作成や更新、ローンの新規契約などが難しくなります。
ただし、債務整理を行わなくても借金の返済を2~3か月滞納すれば、結局は事故情報が登録されてしまいます。
滞納してしまいそうな場合や滞納してしまっている場合は、すぐに債務整理を進めることをおすすめします。
8. 医療ローンの返済を弁護士に相談するメリット
医療ローンの返済を滞納すると、ローン会社から何度も督促の連絡を受け、最終的には給与や預貯金を差押えられるなど、日常生活に支障をきたすリスクを負うことになります。
ローンの返済が大変だと感じたら、借金問題を解決するために債務整理を早めに検討しましょう。
ただし、債務整理をする場合は自分で手続きを進めようとするのではなく、借金問題に詳しい弁護士に相談し、手続きを依頼することをおすすめします。
たとえば、交渉により返済条件の変更を求める任意整理は、弁護士でなければローン会社が交渉に応じないケースが大半です。
任意整理の実績が豊富な弁護士なら、円滑に交渉を進めて有利な条件でローン会社と和解することが期待できます。
また、自己破産や個人再生は多くの書類を収集したり、作成したりして裁判所に提出する必要があります。
提出期限に遅れたり、書類に不備があったりすると、手続きに失敗して借金の減額や返済の免除が認められない危険性があります。
この点、弁護士に依頼すれば煩雑な手続きを任せられるので、依頼者は安心して日常生活を送ることができるのです。
債務整理の手続きにはそれぞれメリット・デメリットがあるため、借金の総額や収入などに応じて適切な手続きを選択することが重要です。
弁護士法人プロテクトスタンスは債務整理の実績が豊富なので、最適な手続きをご提案することが可能です。
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