0. はじめに
複数の貸金業者(金融機関)から借入れしている場合や、借入期間が長いような場合、どこから借入れをしていたのか思い出せない人は少なくありません。また、いつの間にか貸金業者の社名が変わっていたというケースもあるでしょう。
そのため、どの貸金業者から借金をしたか思い出せなくても、債務整理をできるのか不安に感じる人もいるのではないでしょうか。
このコラムでは、借入先を忘れてしまった場合に債務整理の手続きを進める方法や、弁護士に手続きを依頼するメリットなど詳しく解説します。過去の借金をきちんと整理し、人生の再スタートを検討中の方はぜひお読みください。
1. 債務整理に借入先の特定が必要な理由
債務整理の主な手続きとして、過払い金返還請求、任意整理、個人再生、自己破産があります。いずれの方法でも、どこから借入れをしているのか把握することが必要です。
過払い金返還請求は、利息制限法で定められた上限金利を超えて払い過ぎていた利息(過払い金)を、貸金業者に対して返還を求める手続きです。過払い金が発生していても貸金業者が債務者に教えてくれることはないため、過払い金があるかどうかを自分で調べなければいけません。
そのため、過払い金返還請求を行う場合は、どこから借金をしているのか特定する必要があります。
任意整理は、借入先である貸金業者に対し、返済期間の延長、遅延損害金や将来利息のカットなどを求める手続きです。貸金業者と直接交渉するため、借入れ先を把握しなければなりません。
個人再生は、借金の残高を大幅にカットして原則3年(最長5年)で分割して返済していく手続きです。また、自己破産は税金など一部の借金を除き、借金の返済義務が免除されます。
個人再生と自己破産は、原則として借入れがあるすべての債権者に対して債権を届け出るよう通知し、すべての負債額を明らかにする必要があります。そのため、借入先を把握できていなければ手続きを進められません。
2. 借入先を忘れたら信用情報の開示を受ける
どの貸金業者から借金をしているのか思い出せない、社名が変わっていたが新しい社名を知らないなど、借入先がわからない方もいるでしょう。
借入先が貸金業者や銀行であれば、信用情報機関から信用情報の開示を受けることで借入先を特定できる可能性があります。
2-1. 信用情報とは
信用情報とは、クレジットカードの利用状況やローンの契約内容といった情報や、一定期間以上の延滞などの事故情報が登録された情報のことです。
2-2. 信用情報機関は3種類
クレジットカード会社や銀行などの加盟会社から提供された信用情報を収集、管理し、加盟会社からの照会に応じて情報提供を行う機関のことです。
現在、信用情報機関には次の3種類があります。
- 株式会社シー・アイ・シー(CIC)
CICの主な加盟会社は、流通系や銀行系、メーカー系のクレジット会社や、信販会社などです。ほかにも、銀行や消費者金融、携帯電話会社などが加盟しています。
- 株式会社日本信用情報機構(JICC)
JICCの主な加盟会社は消費者金融です。また、CICと同様にクレジット会社や信販会社も多く加盟しています。
- 全国銀行個人信用情報センター(KSC)
KSCは一般社団法人全国銀行協会(全銀協、JBA)が運営する信用情報機関で、銀行や信用金庫、農業協同組合(JA)などが主に加盟しています。
2-3. 開示を受ける手続き
信用情報は借入先が加盟している信用情報機関から開示を受けなければなりません。そのため、借入先がわからなければ、全ての信用情報機関に対して情報開示を求めることになります。
情報開示は、各機関のホームページ上で手続きしたり、書類を郵送したりする方法などで請求します。具体的な申請方法や提出書類、申請にかかる手数料などは機関によって異なります。
各機関のホームページで申請方法の詳細が説明されているので、確認するようにしましょう。
なお、法定代理人や本人から委託された任意代理人、本人が死亡している場合の法定相続人など、本人以外も開示を申請することができます。本人が申請するときと手続き方法が異なる場合があるので確認しましょう。
3. 信用情報の開示を受けても把握できない場合
信用情報の開示を受けても、必ずすべての借入先を把握できるわけではありません。たとえば、次のようなケースでは、借入先がわからない可能性があります。
- 一定の保有期間が経過したことで信用情報が削除された
- 貸金業者が債権回収会社などに債権を売却した
信用情報機関に加盟していない個人やヤミ金から借入れをした場合も、信用情報から借金の方法を把握することはできません。
3-1. 信用情報を削除されても借金は残る
信用情報は一定の保有期間が経過すると削除されますが、借金まで消滅するわけではありません。また、貸金業者が債権を債権回収会社に売却した場合は、借金を債権回収会社に返済することになります。
このようなケースでは、自身で返済先を特定するのが非常に困難なので、貸金業者や債権回収会社などからの連絡を待つことになります。ただし、裁判を起されて、給料や財産の差押えなどを受ける可能性があるので、連絡がきたら今後の対応を弁護士にすぐ相談するようにしましょう。
3-2. 資料などを調べることも重要
信用情報の開示を受けてもすべての借入先が特定できない場合、次のような書類や資料などを調べることで特定できるかもしれません。
- 借金の契約書
- 返済時の領収書
- 通帳や振込明細
- 借入れに使用していたカード
資料から借入先と思われる貸金業者を見つけたら、連絡することで借金の有無や返済状況などが判明する場合もありますが、連絡する際は注意が必要です。
たとえば、数年前から返済がストップしていたような場合、時効の援用により借金返済の必要がなくなることも考えられます。しかし、債権者とのやり取りの内容によっては、返済義務が消滅するはずの借金を返済しなければならなくなる場合があるのです。
また、借入先がヤミ金など悪質な違法業者だと、自身で連絡することでトラブルになってしまう可能性があります。自身で行動する前に、弁護士へ相談することをおすすめします。
4. 借入先が不明でもまずは弁護士に相談を
借金の返済が困難になり、債務整理を行う場合は借入先を特定しなければなりません。どの貸金業者から借金をしているか思い出せなくても、債務整理を諦める前に弁護士へ相談しましょう。
借金問題に詳しい弁護士であれば、信用情報の開示など、借入先を調べるための手段に精通しているため、特定できる可能性が高まります。
そして、借入先を把握できたあとは、債務整理の手続きを弁護士に任せられます。どの債務整理の手続きを選ぶべきかについては、借金の総額や収入、資産の状況などに応じ、最適な手続きを弁護士が提案してくれます。
もちろん、時効が成立している場合の手続きや、借入先がヤミ金など悪質業者の場合の対応など、借金問題の解決をトータルで任せることができます。
弁護士法人プロテクトスタンスでは、債務整理に関する弁護士へのご相談を無料でお受けいたします。借金問題を抱えて不安な方は、まずはお気軽にご相談ください。所員一同、万全の体制でお待ちしております。