- 0. はじめに
- 1. 多重債務とは
- 1-1. 多重債務になる原因
- 1-2. 多重債務に陥るリスク
- 1-3. 多重債務でやってはいけないこと
- 2. 多重債務で返済できない場合のリスク
- 2-1. 遅延損害金の発生
- 2-2. ブラックリスト(信用情報機関)に登録される
- 2-3. 督促を受けるようになる
- 2-4. 訴訟を起こされて差押えを受ける
- 3. 多重債務を対処する方法
- 4. 多重債務で生活が苦しいなら債務整理を検討しましょう
- 4-1. 任意整理
- 4-2. 個人再生
- 4-3. 自己破産
- 5. 債務整理の注意点
- 5-1. 信用情報機関に登録される
- 5-2. 保証人が返済を求められる
- 6. 多重債務で返済に困ったら弁護士に相談を
- 6-1. 最適な債務整理の提案
- 6-2. 返済や督促が止まる
- 6-3. 面倒な手続きを任せられる
0. はじめに
はじめてクレジットカード会社などから借入れをするとき、自分は計画的に返済できると思っている人は多いはずです。
しかし、借入れの便利さを知り、安易に複数の消費者金融などから借金をするようになると、気が付いたら多重債務者になっていたなんてことも十分に考えられます。
毎月返済していても、いっこうに減らない借金の恐怖。一度、多重債務者になってしまうと自力で抜け出すことは簡単ではありません。
もし、返済ができなくなると、貸金業者から督促の連絡を頻繁に受けるようになり、最終的に裁判を起こされて財産を差し押えられる可能性があります。
このコラムでは、多重債務の苦しみから脱出するための解決策を、弁護士が詳しく解説していきます。
1. 多重債務とは
多重債務とは、定義はさまざまありますが、複数の貸金業者から借金をし、返済が困難になっている状態のことです。多重債務に陥っている人のことを多重債務者と呼びます。
日本信用情報機構(JICC)の公表資料によると、多重債務者の人数は2006年12月に貸金業法が成立したことで減少するようになりました。
具体的には、3件以上の借入がある多重債務者の人数は、2007年3月末時点で約443万人でしたが、2017年3月末には約115万人まで大幅に減少しました。
しかし、2022年3月末時点では約116万人で、多重債務に苦しんでいる人の数は横ばいの状態が続いています。
1-1. 多重債務になる原因
多重債務に陥ってしまう原因として、次のような理由による借金が多いといわれています。
- 収入の減少
- 生活費のため
- クレジットカードの利用
- 借金の返済のための借金
- 収入以上の浪費
- ギャンブル
- 名義貸し、保証人になる など
借入れの目的は人によって異なりますし、借金をしたからといって必ず多重債務に陥るわけではありません。
返済能力を超える借入れをして返済が難しくなってしまい、新たな借り入れを繰り返すようになることで、多重債務者になってしまうのです。
1-2. 多重債務に陥るリスク
多重債務に陥ると、借金を返済するために新たな借入れをする傾向があります。
借金の元金に対して利息が発生するため、借入れを繰り返していると借金の総額はどんどん膨れ上がってしまいます。
結果的に、収入の範囲で返済ができないほどの借入額になってしまい、自力での完済ができなくなる可能性が高くなってしまうのです。
1-3. 多重債務でやってはいけないこと
多重債務に陥ってしまった場合、これ以上は借金を増やさないようにすることが何よりも重要です。特に「借金を借金で返済する」ことは危険です。
結局は借金の返済を先送りにしているだけでなく、借入額も膨らんでしまい、返済が困難になる一方になってしまいます。
また、ヤミ金からの借入れやクレジットカードの現金化などは、違法業者や詐欺的な悪質業者がほとんどなので、絶対に利用してはいけません。
法外な手数料や利息を求められたり、悪質な取り立てを受けたりするなど、深刻なトラブルに巻き込まれることが考えられるため大変危険です。
2. 多重債務で返済できない場合のリスク
多重債務に陥ることで返済が困難になるケースが少なくありません。
借金を滞納するとさまざまなリスクが発生します。滞納期間が長期化した場合、債務者が受けるダメージはさらに大きくなります。
可能な限り早い段階で、借金問題の解決に向けて行動することが大切です。
2-1. 遅延損害金の発生
期日までに返済できなかった場合、その翌日から遅延損害金が発生します。遅延損害金とは、借金を滞納したことに対するペナルティーとして支払わなければならないお金です。
つまり、返済が遅れてしまうと、遅れた分だけ支払う金額が増加していきます。
遅延損害金の利率は、利息制限法で定められた上限利率の1.46倍です(利息制限法第4条1項)。そのため、借金に対する利息よりも利率が高く設定されているのです。
2-2. ブラックリスト(信用情報機関)に登録される
返済を滞納したままの状態でいると、信用情報機関に借金を延滞していることが事故情報として登録されます。いわゆる「ブラックリストに載る」状態になります。
事故情報が登録されると、クレジットカードの利用、新規作成やローンを組むことなどが難しくなってしまいます。
2-3. 督促の連絡を受けるようになる
借金を滞納していると、債権者から取り立ての電話や書類での督促が始まります。
債権者からの連絡を無視し続けていると、借金の一括返済を求められることがあります。
分割で返済するのも困難な状況なのに、一括返済は簡単にできることではありません。
2-4. 訴訟を起こされて差押えを受ける
借金の一括返済を請求されても、対応しないで放置していると、債権者は借金を回収するために裁判所に申立てを行います。
債権者の訴えが認められると、強制執行の手続きにより給与や預貯金などが裁判所によって差し押さえられます。
給与が差し押さえられる場合、勤務先に通知されるため、借金を滞納していることがバレてしまうことになります。
3. 多重債務の状況を整理する方法
借金を返済することが苦しいからといって放置していても、借金が自然に消えることはありません。そこで債務の状況を把握し問題点を理解するための対策を紹介します。
3-1. 自治体などの相談窓口に相談する
多重債務の問題をどのように解決したらよいのか、何から始めたらよいのかわからない場合、公共機関の相談窓口などを利用することも手段のひとつです。
たとえば、次のような相談窓口で、借金問題について無料で相談できる場合があります。
- 国民生活センター
- 日本賃金業協会(貸金業相談・紛争解決センター)
- 日本クレジットカウンセリング協会
- 全国銀行協会
- 各自治体
- 法テラス
- 弁護士会 など
これらの相談窓口に連絡することで、何らかのアドバイスを得ることはできますが、相談するだけで借金問題が解決できるわけではありません。
また、各自治体や法テラス、弁護士会などでは、弁護士に相談することができますが、相談に対応した弁護士が借金問題に詳しいとは限りません。
多重債務の状態から抜け出し、借金問題を解決するためには、借金問題に詳しい弁護士に債務整理を依頼することが重要です。
無料で相談できる法律事務所もあるので、安心して相談できるでしょう。
3-2. おまとめローンで借金を一本化する
複数の金融機関からの借金を、借換えにより一本化する「おまとめローン」を利用することも選択肢のひとつです。
おまとめローンには、金利が下がる場合がある、毎月の返済額を抑えられる、返済の管理が楽になるといったメリットがあります。
しかし、毎月の返済額を減らすと返済期間が長期化し、利息が膨らんでしまうので、最終的な支払い総額が増える可能性があります。
また、おまとめローンの利用には厳しい審査があるため、多重債務で返済が困難な状況だと、そもそも審査に通らない可能性があります。
おまとめローンは、新たな借入れにより借金を一本化するだけであり、借金問題の根本的な解決に繋がるわけではないという点も重要なポイントです。
借金問題を解決するには、弁護士に相談し、債務整理の手続きを進めることをおすすめします。
4. 多重債務で生活が苦しいなら債務整理を検討しましょう
複数の金融機関から借入れをして、返済が不可能だと判断したときは、早めに債務整理を行うことを検討しましょう。
借金問題を放置しても状況は悪化するだけです。債務整理を行うことで、借金を返済する負担の軽減や、借金の減額、返済の免除が期待できます。
債務整理には、主に「任意整理」、「個人再生」、「自己破産」という3種類の手続きがあります。
4-1. 任意整理
弁護士が消費者金融やカードローン会社など金融業者と直接交渉し、返済条件の変更を求める手続きです。
具体的には、返済期間を延長して毎月の返済額を減らすことや、遅延損害金や借金の完済までに発生する将来利息などのカットを目指して交渉します。
任意整理により過払い金の発生が確認できた場合、借金を減らせるだけでなく、返済する必要がなくなったり、逆にお金が返ってきたりする可能性もあります。
任意整理では、過去に払い過ぎていた利息がないかを調べるため、利息制限法の上限金利にもとづく再計算(引き直し計算)を行います。
計算の結果、利息の払い過ぎを確認できた場合、過払い金として回収することができるのです。
また、個人再生や自己破産は、借入れがあるすべての金融業者が手続きの対象となりますが、任意整理は手続きの対象を選択することができます。
そのため、自動車ローンは任意整理の対象外にして返済を続けることで、自動車を手元に残すといったことが可能になります。
4-2. 個人再生
個人再生は裁判所に申立てを行い、再生計画の認可を受けることで、借金を大幅に減額し、原則3年(最長5年)の分割払いで返済していく手続きです。
個人再生は、自己破産のように借金の返済が免除されませんが、自宅を手放す必要がありませんし、自動車などの高価な財産を残すことができます。
また、任意整理とは異なりすべての借金が手続きの対象となりますが、任意整理よりも借金を大きく減額できることが期待できます。
4-3. 自己破産
自己破産は裁判所で手続きを申立て、免責が認められると借金の支払い義務が免除される制度です。
ただし、一定の金額を超える預貯金や現金を手放す必要があり、自動車や不動産といった価値のある財産を処分しなければなりません。
さらに警備員や生命保険募集人など一定の職業に就けない場合がある、引っ越しや旅行が制限される場合があるといったデメリットもあります。
5. 債務整理の注意点
債務整理には任意整理、個人再生、自己破産の3つの方法があり、全てに共通するデメリットとして次のような点があります。
- 信用情報機関に登録される
- 保証人が返済を求められる
5-1. 信用情報機関に登録される
債務整理を行なったことが事故情報として登録されます。登録期間は、自己破産や個人再生の場合で5年~10年程度、任意整理の場合は完済から5年程度です。
事故情報が登録されている間は、クレジットカードの新規作成や更新、ローンの新規契約などが難しくなります。
ただし、債務整理を行わなくても借金の返済を2~3か月滞納すれば、結局は事故情報が登録されるため、返済が難しければ早めの債務整理をおすすめします。
5-2. 保証人が返済を求められる
借金を返済できなくなると、借金をした人に代わって保証人が返済する義務を負います。
個人再生や自己破産を行った場合も同様で、自己破産すると免除された金額、個人再生では減額された金額を保証人が返済しなければなりません。
任意整理を行なった場合も、カットすることに成功した利息などについて、保証人が返済を求められることになるでしょう。
ただし、任意整理は手続きの対象を選択できるので、保証人が付いた借金は任意整理の対象から外せば、保証人に迷惑をかけることはありません。
6. 多重債務で返済に困ったら弁護士に相談を
多重債務者となり、借金返済のために借金をするような自転車操業に陥ってしまったら、自力で返済していくことは大変厳しいでしょう。
借金を返済することが苦しいと感じた時には、債務整理について迷わず弁護士に相談し、手続きを依頼することをおすすめします。
債務整理について弁護士に相談、依頼することには、さまざまなメリットがあります。
6-1. 最適な債務整理の提案
債務整理のどの手続きを選択するべきかについては、借金の総額や収入、資産状況など個々の事情により異なります。
適切な手続きを選択しなければ、今後のライフプランにも影響を及ぼすおそれがあります。
借金問題に詳しい弁護士であれば、相談者の状況を踏まえて最適な解決策を提案してくれます。
6-2. 返済や督促が止まる
弁護士に債務整理を依頼すると、すぐに債権者へ受任通知を送付します。受任通知を受け取った債権者は、債務者に直接連絡できなくなるため、返済の督促や取立てが止まります。
借金を滞納している債務者にとって、債権者からの執拗な督促は精神的に追い詰められ、とても苦しいものです。債権者からの連絡がなくなる点も、弁護士に依頼する大きなメリットといえるでしょう。
6-3. 面倒な手続きを任せられる
債務整理の手続きはとても複雑です。
債権者と交渉する任意整理は、そもそも弁護士などの専門家でなければ交渉に応じないケースも少なくありません。
個人再生や自己破産では、多くの資料を集めたり作成したりするだけでなく、裁判官とのやり取りなども求められます。
適切に手続きを進めなければ、借金の減額や返済の免除が認められない可能性もあります。
弁護士であれば煩わしい作業を正確に進めてくれるので、無事に手続きが成功することが期待できるのです。
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