- 0. はじめに
- 1. ひととき融資とは?
- 2. ひととき融資の手口
- 3. ひととき融資によって成立する犯罪
- 3-1. 貸金業法違反
- 3-2. 出資法違反
- 3-3. 脅迫罪・強要罪・恐喝罪
- 3-4. 不同意性交等罪・不同意わいせつ罪
- 3-5. 児童買春・ポルノ禁止法違反
- 4. 民事上の責任が発生する可能性も
- 5. ひととき融資を利用してはいけない理由
- 5-1. 写真の送信や動画の撮影を求められる
- 5-2. 不当に高金利の返済を迫ってくる
- 5-3. 要求がエスカレートする
- 5-4. 被害が表面化しにくい
- 5-5. 借主が犯罪に問われるケースも
- 6. 多重債務でお困りなら弁護士にご相談を
- 6-1. 最善の解決方法を提案してくれる
- 6-2. 督促の連絡をストップできる
- 6-3. 面倒で複雑な手続きを任せられる
- 7. 借金問題は弁護士法人プロテクトスタンスにお任せください
0. はじめに

お金を貸し付ける条件として肉体関係(性交渉)を求められる「ひととき融資」。SNSなどでやり取りする個人間融資の一種ですが、違法なヤミ金業者が関与している可能性が高く、数多くの危険を伴うため、絶対に利用してはいけません。
このコラムでは、ひととき融資を利用する危険性や、借金問題に悩んだ際に弁護士へ相談するメリットなどを詳しく解説します。
1. ひととき融資とは?
ひととき融資とは、性交渉を条件にお金を貸し借りする個人間融資の通称です。一時的な性交渉が融資の条件となることから、「ひととき融資」と呼ばれています。
個人間でお金を貸し借りすること自体は違法ではないため、「ヤミ金からお金を借りるより安全だ」と考える方もいるかもしれません。そのため、多重債務が原因で金融機関からお金を貸してもらえなくなった女性などが利用するケースが少なくないようです。
しかし、ひととき融資を利用した後で大きなトラブルに発展し、深刻な被害を受ける可能性は十分にあります。また、単に性交渉を目的としてお金を貸そうとする人もいますが、お金を貸してくれた人が結局は違法なヤミ金業者だったという場合もあるのです。
そのため、多額の借金に悩んでいても危険な方法に頼るのではなく、弁護士に相談するなど適切に対処するようにしましょう。
2. ひととき融資の手口
ひととき融資は、主にSNSやインターネット上の掲示板、出会い系サイトなどを通じてお金に困っている女性を集めます。ハッシュタグ(#)とともに「お金を貸します」などと呼びかけて女性からの連絡を待つほか、逆に女性が「お金を貸してください」と投稿する場合もあります。
そして、お金を貸し付ける側の人(貸主)と借りる側の人(借主)がSNSのダイレクトメッセージ(DM)などでやり取りをして実際に会い、性交渉を条件に融資が行われます。
お互いに合意したうえで性交渉に至り、お金を貸し借りしたのであれば、「悪いことは何もしていない」と考える方もいるかもしれません。しかし、ひととき融資はさまざまな違法行為に該当する可能性があります。
3. ひととき融資によって成立する犯罪
ひととき融資によってお金を貸し借りした場合、どのような犯罪が成立するのでしょうか。ここでは、貸主が問われる可能性がある犯罪についてご説明します。
3-1. 貸金業法違反
貸金業を営むには財務局や都道府県の登録を受ける必要があり、無登録での貸金業は禁止されています(貸金業法第3条1項、11条1項)。貸主が登録を受けていないにもかかわらず、ひととき融資を反復継続して行うと、無登録で貸金業を営んでいるとして、貸金業法違反となる可能性があります。
違反した場合は、10年以下の懲役もしくは3,000万円以下の罰金、または両方が科せられます(同法第47条)。
3-2. 出資法違反
ひととき融資では、貸し付けの条件として性交渉だけでなく、不当に高い金利が設定されるケースもあります。
金利は、法律によって年109.5%(うるう年は109.8%、1日あたり0.3%)までという上限が設けられています。上限を超える金利で契約した場合、貸主は出資法違反により5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方が科せられます(出資法第5条)。
3-3. 脅迫罪・強要罪・恐喝罪
貸主が借主に対し、裸の写真を要求したり、性交渉の動画を撮影したりするかもしれません。
そして、借主が「返済しなければネットに流出させる」などと脅す行為は、脅迫罪に該当する可能性があります。刑罰は、2年以下の懲役または30万円以下の罰金です(刑法第222条)。
また、脅迫や暴行によって義務のない行為を強要した場合は強要罪に当たる可能性があります。たとえば、「写真や動画を流出されたくなければ、肉体関係を続けさせろ」などと脅すことです。
ほかにも、「流出されたくなければお金を払え」など、行為ではなくお金を要求すれば恐喝罪が成立する可能性があります。
刑罰は、強要罪が3年以下の懲役、恐喝罪が10年以下の懲役です(同法第223条、249条)。
3-4. 不同意性交等罪・不同意わいせつ罪
「性交渉を条件にしてまでお金を借りるべきではない」と考えを改め、性交渉を拒否したにもかかわらず、貸主が強引に行為に及んでくるかもしれません。
このようなケースでは、貸主に対して不同意性交等罪が成立する可能性があります。また、性交渉に及ばなくても、わいせつ目的で強引に体を触るなどすれば、不同意わいせつ罪が成立すると考えられます。
刑罰は、不同意性交等罪が5年以上の有期拘禁刑(懲役)で、不同意わいせつ罪は6か月以上10年以下の拘禁刑です(同法第176条、177条)。
3-5. 児童買春・ポルノ禁止法違反
もし、ひととき融資の借主が18歳未満の場合、児童買春に該当するとして、貸主は児童買春・ポルノ禁止法に違反する可能性があります。刑罰は、5年以下の懲役または300万円以下の罰金です(児童買春・ポルノ禁止法第4条)。
4. 民事上の責任が発生する可能性も
ひととき融資の貸主には、民事上の責任が発生する可能性もあります。たとえば、ひととき融資には社会的な妥当性がない、つまり「公序良俗」に反する行為として、契約が無効になると考えられます(民法第90条)。
さらに、ひととき融資が不法行為に該当すれば、貸主は借主に対してお金の返還を求めることができなくなります(同法第708条)。もし、ひととき融資によって借主が精神的苦痛を受ければ、貸主に対して慰謝料を請求することも可能です(同法第710条)。
5. ひととき融資を利用してはいけない理由

ひととき融資によって成立する犯罪や民事上の責任は、あくまでも貸主を対象としています。そのため、性交渉に応じさえすれば、ひととき融資を利用してお金を借りることには、メリットが多いと考える方もいるかもしれません。
しかし、貸主が犯罪行為や民事上の責任を顧みない違法なヤミ金業者であるケースも多いため、深刻な二次被害を受ける可能性が非常に高いのです。たとえば、次のような被害を受けることが考えられます。
5-1. 写真の送信や動画の撮影を求められる
すでにご説明した通り、ひととき融資の貸主は借主に対し、裸の写真を送らせたり、性交渉の動画を撮影したりすることがあります。拒否すればお金を貸してもらえないと考え、応じてしまうケースがあるようです。
その結果、より大きな被害に繋がる可能性が高くなってしまいます。
5-2. 不当に高金利の返済を迫ってくる
SNSなどでやり取りしていた時、貸主が「性交渉に応じるなら無利息でいい」と言ったり、通常よりも低い金利を提案してきたりすることがあります。しかし、性交渉が終わった後、法律の上限を大幅に超える高金利の返済を求めてくるかもしれません。
「最初と話が違う」と拒否しようとしても、貸主が写真や動画を流出させることを脅してくれば、高金利での返済に応じざるを得ないでしょう。
5-3. 要求がエスカレートする
借金を滞納してしまった場合、返済を先延ばしにする条件として再び性交渉を要求してくるケースもあります。違法な高金利だと返済が困難かもしれませんが、完済するまで何度も関係を迫られることも考えるでしょう。
また、避妊具の使用を断られるなど、徐々に要求がエスカレートする可能性もあります。
要求に応じないつもりでも、返済が滞っていて、貸主が写真や動画を持っていれば、やはり拒否するのは簡単ではありません。たとえ完済できたとしても、写真や動画がある限り、関係を断ち切れない可能性だって十分にあるでしょう。
5-4. 被害が表面化しにくい
ひととき融資は貸主に対してさまざまな犯罪が成立する可能性があります。しかし、性交渉を条件に借金したことへの後ろ暗さや、写真や動画が流出する恐怖などから、警察へ被害を訴えることができないケースもあるでしょう。
そのため、脅迫や強引な性交渉、違法な高金利といった被害が表面化しにくく、最終的には泣き寝入りすることになってしまうのです。
5-5. 借主が犯罪に問われるケースも
実は、借主に対して犯罪が成立する可能性もゼロではありません。
先ほどご説明した通り、基本的にひととき融資の貸主はお金の返還を請求できません。しかし、この点を逆手に取り、最初から返済する意思が無いのにお金を借りた場合、借主に対して詐欺罪が成立する可能性があるのです。
なお、詐欺罪の刑罰は、10年以下の懲役です(刑法第246条)。
6. 多重債務でお困りなら弁護士にご相談を
「複数の金融機関から借金したものの次第に返済が難しくなり、最終的には誰もお金を貸してくれなくなった」。ひととき融資を利用してしまうのは、このような多重債務の状態にある人が多いでしょう。
しかし、これまでご説明したように、ひととき融資の利用には多くの危険があるため、絶対に利用してはいけません。危険な手段でお金を工面しようとする前に、借金問題に詳しい弁護士へ相談し、対応を依頼することをおすすめします。
借金問題を弁護士に相談し、その解決を依頼することには、次のようなメリットがあります。
6-1. 最善の解決方法を提案してくれる
借金問題を解決するための手段として、債務整理という手続きがあります。債務整理には、任意整理や自己破産、個人再生といった複数の種類があり、それぞれメリット・デメリットが異なります。
債務整理のどの手続きを選択するべきかについては、借金の総額や収入、資産の状況など、さまざまな事情を踏まえて判断しなければなりません。適切な手続きを選択しなければ、借金問題の解決が遠のいてしまう可能性もあるでしょう。
借金問題に詳しい弁護士であれば、状況を踏まえて最適な債務整理の手続きを提案してくれます。
6-2. 督促の連絡をストップできる
借金の返済が滞ってしまうと、連日のように督促の連絡を受ける可能性があります。そして、連絡が来ることへの不安や恐怖から逃れるため、急いでお金を用意する手段としてひととき融資を利用するというケースもあるでしょう。
この点、弁護士に債務整理を依頼すると、弁護士がすぐに貸主(債権者)へ受任通知を送ります。受任通知を受け取った債権者は、借主(債務者)に直接連絡できなくなるため、督促の連絡がストップします。
執拗に連絡を受けることは精神的にとても苦しいものですが、督促を受けなくなる点も、弁護士に依頼する大きなメリットです。
6-3. 面倒で複雑な手続きを任せられる
債務整理の手続きは、とても複雑で面倒なものです。
たとえば、債務整理の一種である任意整理は、返済条件について債権者と交渉する手続きです。しかし、弁護士などの専門家でなければ、そもそも交渉に応じてもらえないケースが少なくありません。
また、裁判所での手続きとなる自己破産や個人再生は、数多くの資料を集めたり作成したりしなければなりません。資料の提出後は、裁判官などとのやり取りも必要です。
いずれの手続きも、正確に進めなければ借金問題の解決に失敗してしまうことが考えられます。この点、弁護士に依頼すれば手続きを正確に進めてくれるので、手続きに成功することが期待できるでしょう。
7. 借金問題は弁護士法人プロテクトスタンスにお任せください
高額な借金を抱えて返済に苦しんでいても、誰かに相談することは勇気がいると思います。しかし、弁護士への相談が新しい人生をスタートするための第一歩になるかもしれません。
弁護士法人プロテクトスタンスでは、電話やメールだけでなく、シミュレーターやチャットなど、複数のお問い合わせ窓口を設けております。匿名・仮名でのお問い合わせも可能なので、ぜひお気軽にご利用ください。
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