資金ショート[しきんしょーと]とは?
利用可能な手元の現預金が不足している状態であり、指定された期日までに必要経費などの決済ができなくなることです。
企業にとって、資金ショートの状態に陥ってしまうと金融機関から融資を受けるなどの資金の借入が困難になるため、運転資金の不足から倒産に追い込まれます。
資金ショートは、赤字や債務超過の状態よりも緊急性が高く、経営のうえで致命的な影響を及ぼします。
(1)資金ショートと赤字の違い
赤字とは、単に収入と支出のバランスが崩れて、支出が収入を上回った状態を指します。言い換えると、売上金額から原価や販管費などの経費を差し引いたとき、利益が出ずに損失が発生していることになります。
赤字の場合は、予定していた収入が得られなかったり、予期しない大きな出費があったりなど、一時的な現金流動の問題であることが多く、慢性的に赤字が続くような業績悪化でなければ解決することが可能です。
たとえば、経営戦略の練り直し、新規顧客の獲得、コストの削減、生産性や利益率の改善などにより、その後売り上げを伸ばすことができれば、黒字に転換できる可能性があります。
そのため、運転資金の決済ができない資金ショートとは異なります。
(2)資金ショートと債務超過の違い
債務超過とは、債務者がその債務につきその財産をもって完済することができない状態のこと、つまり、債務の合計額が資産の合計額を超過している状態にあることをいいます。
債務超過は、合名会社・合資会社を除く法人の破産手続開始原因の1つになります(破産法第16条1項)。破産手続開始原因とは、債務者について破産手続きを開始する必要があると認められる財産状態の悪化のことであり、「債務超過」と「支払不能」の2つがあります。
このうち、支払不能は、債務者が支払能力を欠くため、弁済期にある債務を一般的かつ継続的に弁済できない状態であり、個人(自然人)と法人(会社)に共通する破産原因です(同第15条1項)。
債務超過は追加で融資を受けるなどして資金を調達することができれば、いったんは会社の存続は可能です。しかし、資金ショートは、資金不足により期日までに支払いができなくなり銀行取引が停止になるなど、非常に危険な状態にあるといえます。
(3)資金ショートが起こる原因
資金ショートが起こる主な原因は、売上高の減少、経費の増加、売掛金の回収不能と回収の遅延、不測の事態による出費、資金管理不足などが挙げられます。
- 売上高の減少
売上高が減ると将来の入金予定がなくなり、収入の見通しが立たなくなります。さらに、売上を上げるための必要な経費があれば、その支払いは残るため、資金が不足する可能性があります。
- 出費の増加
想定外に出費が増加する場合、資金ショートの原因になります。たとえば、人件費が増えた、設備投資を行った、大規模な受注に対応するために先行して支出が必要になる場合などです。事業規模の拡大は望ましいことですが、売上が入金されるまでの間、資金を確保できなければ資金ショートで倒産する危険性はあります。
- 売掛金の回収不能と回収の遅延
一般的な取引では、売上は現金ではなく売掛金の形をとって一定期間の後に入金されるため、売上があっても実際に資金(キャッシュ)となるまでに時間がかかります。
さらに取引先からの売掛金の支払い遅れや、倒産により売掛金が回収できなくなると、資金ショートになるリスクは高くなります。 - 不測の事態による出費
経営にダメージを与えるような災害などのトラブルが発生すると、設備の修繕が必要になったり、工場の稼働が停止するなど、売上の減少や出費の増大を招く恐れがあります。
- 資金管理不足
売上高や利益額ばかり気にしてしまい、手元の資金額の管理を怠ることで、支払い状況の把握まで手が回らなくなります。そのため、収支のバランスが崩れ支払いに足りるだけの資金が無いという事態に陥るのです。
資金ショートを回避するためには、収支を把握し、適切に管理することが重要です。このとき、一定期間内における、入出金をまとめた資金繰り表を利用すれば、キャッシュフローが明確になると同時に、資金不足になる時期の見通しが立てられます。
また、仮に資金ショートに陥る前に融資を受けることができても、元金とは別に利息が発生しますので、返済計画を立てた上で検討することが重要です。融資によって一時的に問題を解決することができても、返済できず結果的に債務が増え倒産に追い込まれてしまうこともあるからです。
(4)資金ショートは赤字企業だけの問題ではない
資金ショートは赤字企業だけではなく、黒字決算で利益が出ている企業であったとしても起こる可能性はあります。売掛金の入金サイクルが長期にわたり、営業利益を資金化できないと保有している資金が枯渇していきます。
また、業務を行う上で必要な大規模設備投資、在庫過多も原因と考えられます。黒字でも在庫が残っていると、仕入れにかかったコストを回収できず、負債を抱えたまま経営を続けることになります。
会社の経営状態にかかわらず資金ショートのリスクはあるため、業績が不調になった時に備えたキャッシュフローを想定しておくことは大切です。
債務超過の継続や資金ショートなどで、会社経営に不安を感じたら早めに弁護士に相談することをおすすめします。
そうすることで、たとえば、民事再生により会社を再建することができたり、計画的に会社を破産させることで、債権者や従業員への迷惑を軽減しつつ、会社を清算することもできます。