家族に内緒で債務整理をすることはできますか?
債務整理の手続きの中でも、任意整理の場合は家族に知られることは基本的にありません。しかし、自己破産や個人再生(民事再生)については、注意すべき点もあります。順番に解説していきましょう。
(1)書類の管理・保管
当然ですが、債務整理に関する書類を家族に見られてしまえば、債務整理の事実を知られてしまいます。書類の管理・保管には注意してください。
弊事務所では、家族に内緒で債務整理を希望する方のため、最大限の配慮をしております。
たとえば、封筒については、法律事務所の名前の入っていない、個人名の封筒を使用しております。
また、そもそも郵便物を自宅に送付されたくない方のため、郵便局留めで郵送することも可能です。
なお、自己破産や民事再生を申し立てた場合、裁判所から書類が届きますが、弁護士が代理人となっている場合は、弁護士事務所宛に届きます。
そのため、裁判所からの書類で、家族に知られてしまうこともありません。
(2)金融機関などからの督促状
弁護士に債務整理を依頼すると、各債権者宛に受任通知(弁護士介入通知)を発送します。
これにより、債権者である金融機関や債権回収会社は、督促や取立を行うことが禁止されます(貸金業法第21条1項9号、債権管理回収業に関する特別措置法第18条8項)。
そのため、本人宛に督促の電話がかかってきたり、督促状が送られてくることがありませんので、借金の存在自体が発覚するリスクが減ります。
しかし、債権者から訴訟を起こされた場合、裁判所から自宅宛てに訴状が届いてしまいますので、同居の家族に借金していたことを知られてしまう可能性があります(それ以降の裁判所からの郵便物は代理人である弁護士の事務所宛に届きます)。
(3)官報への掲載
自己破産や個人再生を行うと、官報に住所・氏名・手続きをした裁判所・その日時が掲載されます。
官報とは、国が毎日発行している新聞のようなものですが、一般の人が官報を閲覧することはまずありません。
また、官報には毎日膨大な情報が掲載されていますので、その中から特定の個人を見つけることは極めて困難です。
そのため、官報への掲載により家族に自己破産の事実が発覚する心配はないでしょう。
(4)自宅を所有している場合
自己破産をする場合、本人の名義で自宅を所有していると、住宅ローンの有無にかかわらず、自宅は売却されてしまいます。
というのも、住宅ローンが残っていれば、銀行などが抵当権を実行します。また、住宅ローンを完済した場合でも、不動産のような高価な財産は裁判所が任意売却や競売により売却します。
そのため、自宅を失ってしまいますので、同居の家族に秘密のまま手続きをすることはできません。
(5)家族の協力が必要な場合
各裁判所の運用にもよりますが、自己破産や個人再生の手続きでは、家計を同じくする同居の家族に関する書類(配偶者の収入に関する資料、給与明細や通帳の写しなど)が必要となったり、家族の協力が必要なことがあります。
(6)家族から借金している場合
自己破産や個人再生をする場合、裁判所に提出する債権者一覧表に、ご家族を債権者として記載しなければなりません。
そして、裁判所は、債権者一覧表に記載されたすべての債権者に対して、通知文書を送ります。
そのため、債務整理を行った事実は発覚してしまいます。
なお、ご家族からの借り入れについて、故意に債権者一覧表に記載しない場合、免責不許可事由となったり、再生計画が認められないなどの不利益が発生します。お気持ちは理解できますが、絶対に止めましょう。
(7)家族の理解が生活再建の近道
ご相談者さまには、借金するに至ったさまざまなご事情があるかと思いますので、可能な限り、ご家族に秘密のまま債務整理の手続きを進められるように配慮しております。
しかし、特に自己破産や民事再生については、同居のご家族に打ち明けたうえで、その協力を得ながら債務整理を行うことが、もっともスムーズに手続きが進みます。
弊事務所では、ご希望があれば、弁護士とのご相談時にご家族に同席していただき、ご不安のないよう詳しく説明もしております。