- 毎月の返済額がきつい
- 借金の残額がちっとも減らない
- 債務整理ってよく聞くけど、どんな手続きなの?
0. はじめに
借金の大部分を占める、サラ金(消費者金融)、銀行系カードローン、クレジットカード(信販会社)からのキャッシングローンやショッピングローン。
まずはこれらの借金の総額がいくらなのか正確に把握することが、借金問題を解決するための第一歩となります。
なぜなら、借金の総額と自分の収入とを比較したうえでないと、債務整理のどの手続きが自分に適しているかわからないからです。
また、この場合、利息制限法にもとづく引き直し計算の存在も忘れてはなりません。
2010年(平成22年)より前は、多くの消費者金融やクレジットカード会社が、利息制限法で定められた上限を超える利息を徴収していました。
そのため、利息制限法内の利息で返済をしていたならば、正確な負債額はどれくらいなのかを確認するため、利息制限法にもとづいて過去の取引を再計算する作業が必要となります。
また、過去に払い過ぎた利息が多かった場合、借金の残額が大きく減ったり、借金がゼロになったり、逆に過払い金として手元に戻ってくる可能性もあります。
1. 金融機関(貸金業者)ごとの特徴
次に、消費者金融、銀行系カードローン、クレジットカード(信販会社)の借入れの特徴について大まかに見てみましょう。
(1)消費者金融の場合
消費者金融の特徴として、無担保かつ保証人を必要としない場合が圧倒的に多いことが挙げられます。
また、医療ローンや、教育ローン、カーローンのように、借金の用途を問わないフリーローンであることも特徴の1つです。
消費者金融の場合、他の金融機関からの借入れに比べて、審査基準が緩く、即日に借入れをすることも可能であるため、借金をしている多くの人が、最初に利用する金融機関となっています。
その一方で、銀行系カードローンなどに比べて、利率は利息制限法上限の15~20%に近い利率で設定されていることがほとんどです。
また、近年は、総量規制の対象となるため、1社あたりの借金の金額が数十万円前後であることも多いです。
(2)銀行系カードローンの場合
銀行系カードローンとは、銀行や信用金庫が提供する個人を対象としたキャッシングサービスのことです。
銀行系のローンは、住宅ローンや教育ローンなど複数の種類がありますが、フリーローンの場合は、消費者金融と同様に、無担保かつ保証人なしで、利用目的も問わない場合がほとんどです。
銀行系カードローンの特徴として、消費者金融と比べて利率が低く設定されているメリットがありますが、その一方で、審査に時間がかかるというデメリットもあります。
また、銀行系カードローンは、総量規制の対象外であるため、借金の金額が数百万円と高額に膨らんでしまうことも少なくありません。
(3)クレジットカード会社(信販会社)の場合
キャッシングサービスについては、消費者金融と仕組みは同じであり、無担保・保証人なしで借りられる場合がほとんどです。
また、2010年(平成22年)より以前にキャッシングサービスを利用していた場合、利息制限法に引き直して再計算することにより、借金の総額が減ったり、過払い金が発生している場合もあります。
しかし、クレジットカードのキャッシングサービスを利用している方は、ショッピング枠でリボ払いや複数回払いを使用している方が圧倒的に多いものです。
ショッピング枠での利用分については、引き直し計算の対象外となりますから、債務整理をしても、借金の金額はそのまま残ります。
したがって、ショッピングの残債務を差し引いても、キャッシングの過払いが残っており、手元に戻ってくるということはあまりありません。
2. 債務整理の3つの手続き
それでは、引き直し計算をしても残ってしまった借金については、どのようにすべきなのでしょうか。
これに対しては、任意整理、個人再生(民事再生)、自己破産という3つの債務整理の方法があります。
(1)任意整理
任意整理は、他の手続きと異なり、裁判所を通さない方法です。原則的に、今まで発生した遅延損害金や完済するまでに発生する利息(将来利息)を免除してもらい、元金のみで返済していくように金融機関と交渉を行います。
引き直し計算による減額がない限り、大幅な残債務の減額は見込めませんが、遅延損害金や将来利息を免除してもらうだけでも、借金の総額や毎月の返済額を減らすことができます。
任意整理を行えるか否かの判断基準は、毎月の原資の目安を手取りの収入から家賃を引いた残りの3分の1とし、借金の総額を3~5年かけて完済できるかという点です。
[任意整理のメリット]
任意整理を行う債権者(金融機関)を選べるということです。
たとえば、住宅ローンや自動車ローンについては、任意整理を行うと担保権が実行されたり、自動車を引き揚げられたりするおそれがあります。
任意整理の場合、そのような債権者を外して手続きを行うことができます。
[任意整理のデメリット]
すべての債務整理に共通しますが、債務整理を行うと5~10年間、債務整理をしたことが信用情報機関に登録されます。そのため、新たに借り入れをしたり、クレジットカードの作成や更新に影響が出てしまいます。
また、引き直し計算以外に大幅な減額が見込めないことも任意整理の特徴の1つです。たとえば、銀行系カードローンのみ借金をしていた場合、そもそも利息制限法内の取引であるため、借金の減額はあまり見込めません。
(2)個人再生(民亊再生)
裁判所を通した手続きであり、住宅や自動車などの財産を残したまま、再生計画案にもとづいて減額された借金を、3~5年間かけて分割返済していきます。
住宅資金特別条項を利用することにより、住宅ローンの返済は続けたまま、住宅を保持することができるのが大きな特徴です。
[個人再生のメリット]
住宅や自動車などの財産を残したまま、下記の最低弁済額を返済すれば、残りの借金は免除されます。
自己破産のように職業の資格制限などもありませんし、任意整理と比べて、大幅な借金の減額が見込めます。
借金(債務)総額 ※住宅ローンの金額は除く | 最低弁済額 |
---|---|
100万円未満 | 全額 |
100万円以上500万円未満 | 100万円 |
500万円以上1500万円未満 | 借金総額の1/5 |
1500万円以上3000万円未満 | 300万円 |
3000万円以上5000万円未満 | 借金総額の1/10 |
[個人再生のデメリット]
裁判所を通した手続きですので、一部の債権者のみ選択して手続きを行うことはできません。
自動車ローンも対象に含みますし、家族や友人、勤務先からの借入れも個人再生の対象としなければなりません。
また、裁判所に提出するために、日々の家計状況や通帳の写し、給与明細など様々な書類を作成したり提出しなければなりません。
(3)自己破産
自己破産は、個人再生と同じように裁判所を通した手続きとなります。裁判所に自己破産を申し立て、「支払い不能(※)」であると判断され、免責の許可が下りると、税金や社会保険料などの公租公課を除いたすべての借金の返済義務がなくなります。
そのため、自己破産を申し立てた以降の収入すべてを自分の財産とし、生活を再建することが可能です。
※ここでいう「支払い不能」とは、裁判所や個人の状況にもよりますが、借金の総額>毎月の返済可能額の3年分を目安として判断されます。
[自己破産のメリット]
公租公課以外の借金がすべてなくなることです。
任意整理や個人再生は、金融機関との和解や裁判所での手続きの終了後も、毎月の返済を継続するため、収支に気遣わなければなりません。
しかし、自己破産の場合、借金の返済義務それ自体が無くなるため、日々の返済を気にすることがありません。
[自己破産のデメリット]
自由財産(※)に属さない高価な財産は、すべて処分・換価し、債権者の返済に回さなければなりません。また手続き中には、一定の職種の資格制限が設けられています。
その他、すべての債権者を対象とすることや、裁判所に提出する書類の作成があることは個人再生の手続きと同じです。
(※)処分を行わず保持できる自由財産の例(東京地裁の場合)
- 99万円以下の現金
- 残高が20万円以下の預貯金
- 見込額が20万円以下の生命保険解約返戻金
- 処分見込額が20万円以下の自動車
- 居住用住宅の敷金
- 電話加入権
- 支給見込額の8分の1が20万円以下である退職金債権
- 家財道具
- 差押えを禁止されている動産または債権