- 家賃を滞納している
- 滞納している水道光熱費がある
- 未払いの税金や社会保険料がある
- 養育費や婚姻費用を減らしたい
0. はじめに
借金といえば、消費者金融やクレジットカード会社、銀行といった金融機関からの借入れであることがほとんどです。
しかし、借金を返せないでいると、やがて光熱費や家賃、税金といった社会生活で欠かすことのできないものまで滞納してしまうことが少なくありません。
そこで今回は、家賃、水道光熱費などのライフライン、税金・社会保険料などの公租公課、養育費や婚姻費用などが債務整理の対象となるかについて、解説していきましょう。
1. 家賃と債務整理
まず、家賃の滞納と任意整理についてです。
任意整理は利息や遅延損害金を原則免除してもらい、元金のみの返済を求める手続きです。この点、家賃には利息は付いていませんが、支払いが延滞した場合、遅延損害金を請求されることがあります。
また、賃貸借契約に保証会社が付いている場合、保証会社が立て替えて支払った家賃について利息や遅延損害金が発生することもあります。
そのため、滞納中の家賃が高額の場合には、弁護士が賃貸人との間に入って任意整理を行うことで、無理のない範囲での分割返済が認められるケースもあります。
ただし、家賃を任意整理の対象にすると、借り主の連帯保証人に滞納している家賃の請求が行われることになりますので、ご注意ください。
次に、個人再生(民事再生)や自己破産についてはどうでしょうか。滞納している家賃も、債務(借金)の一つですので、個人再生や自己破産といった法的整理を行うことにより、減額あるいは免責の対象となります。
しかし、約定通りの家賃を返済できないとなると、退去事由に該当し、住み慣れた家を出ていかなくてはなりません。
そのため、入居中の滞納家賃について法的整理は適していません。その一方で、すでに退去済の住宅の家賃については、法的整理を行うことに問題はありません。
2. 水道光熱費と債務整理
では、水道光熱費を滞納している場合はどうでしょうか。
水道光熱費について任意整理を行うことができません。電力会社やガス会社、水道局は、料金の減額には一切応じていないからです。しかし、個人再生や自己破産を行えば、滞納分の債務の圧縮もしくは免除が可能です。
ただし、破産手続開始決定後または個人再生手続開始決定後に発生する水道光熱費については、手続きの対象としていませんので、支払わなければなりません。
また、滞納期間が長くなると、ライフラインが止められてしまうことも覚えておきましょう。
3. 税金や社会保険料(公租公課)と債務整理
税金や年金、社会保険料といった公租公課については、破産法により非免責債権とされています。
そのため、たとえ個人再生や自己破産を行ったとしても、未納延滞分が減額されたり、免除されることはありません。
しかし、収入が一時的に減少して支払いが困難になった場合、役所などに相談すれば、公租公課の分割払いや支払期限の猶予などに対応してくれるケースもあります。
したがって、公租公課の支払いに行き詰った場合は、税務署や年金事務所、市区町村役場に相談してみましょう。
4. 養育費や婚姻費用と債務整理
子どもの養育費や別居中の配偶者へ支払っている婚姻費用についても、公租公課と同様に、非免責債権となります。
そのため、個人再生や自己破産を申し立てたとしても、減額・免除の対象とはなりません。
しかし、自身の収入に相応しくない金額を支払っている場合や、養育費・婚姻費用の取り決め時から大きく収支状況が変わった場合、家庭裁判所に調停を申し立てることにより、減額される可能性はあります。
裁判所がホームページ上で公開している「養育費・婚姻費用算定表」で、自身の収入と照らし合わせみてください。
5. まとめ
水道光熱費や税金などの公租公課については、お金に困ったとしても可能な限り支払いをしていくすべきです。
消費者金融やクレジットカード会社からの借金に優先し、これらの返済を行っても偏頗弁済には該当しません。
そればかりか、滞納をしていると日常生活に欠かせないライフラインが止められてしまったり、税金の場合、給料を差押えられてしまう可能性もあります。
消費者金融やクレジットカード会社などからの借金が増えすぎて、水道光熱費や税金の支払いに影響が出そうな場合は、弁護士に早く相談して債務整理の手続きを検討しましょう。