- 奨学金の返済がきつい・・・
- 奨学金は債務整理できるの?
- 奨学金の返済を滞納した場合の保証人への影響は?
0. はじめに
借金返済の問題を抱えている人の中には、奨学金の返済が厳しい方も少なくありません。
独立行政法人日本学生支援機構の統計資料によると、返還期限猶予者の人数は、平成23年には108,362件であったのに対して、平成29年には155,477件、平成30年には140,755件と、高止まりの数字が続いています。
平成31年度以降の数字は明らかにされていませんが、少なくとも令和2年度以降は新型コロナウイルス感染拡大の経済不況により、奨学金返済でお悩みの方はさらに増加傾向にあるといえるでしょう。
そこで今回は、奨学金と債務整理について詳しく解説していきましょう。
1. まずは支払猶予・減額制度の検討を!
奨学金の返済でお困りの場合、多くの奨学金制度が導入している返済(期限)猶予制度の申請をまずは検討してみましょう。
返済猶予制度とは、災害や失業などで収入が減った場合、申請により一定期間、返済の猶予・中断が認められている制度です。
その目安としては、年収300万円以下の場合に認められる可能性があります。申請が認められれば、奨学金の返済の一時猶予が認められ、最長で10年間、奨学金の返済期限の延長が認められます。
なお、この制度は、期限の猶予が認められるだけで、支払総額が減額されるわけではありません。
その他にも、減額制度を導入している奨学金制度もあります。減額制度とは、病気やケガ、その他経済的理由が原因で、奨学金の返済が困難になった場合に毎月の返済額を減らす制度のことです。
原則、年収が325万円以下の場合に認められ、最長で15年間、毎月の返済額を2分の1から3分の1まで減らすことができます。
もっとも、毎月の返済額を減額できますが、支払総額までは減額されません(つまり、長期分割となります)。この点は、支払猶予の制度と同じです。
2. 任意整理と奨学金
任意整理とは裁判所を介さずに行う債務整理手続きです。原則、利息と遅延損害金を控除した元金のみの返済交渉を行います。
しかし、任意整理のデメリットとして、信用情報機関への登録があります。登録後5~7年間前後は、新たなクレジットカードを作ったり、ローンを組んだりすることが難しくなります。
奨学金の場合、利率は数%前後で、他の消費者金融やクレジットカード会社からの借入の利率の半分以下ということもあり、任意整理に応じないことが多いです。
また、任意整理を行うと、保証人がついている奨学金の場合は、保証人に対して請求される可能性があります。
そのため、奨学金を任意整理するメリットはほとんど無いといえます。奨学金以外の借金があれば、その任意整理を行い、毎月の返済額を減らしたうえで、奨学金の返済を継続したり、支払猶予や減額制度を利用すべきでしょう。
3. 個人再生(民亊再生)と奨学金
消費者金融やクレジットカード会社からの借金が多過ぎて、任意整理でも返済できない場合、個人再生または自己破産を検討していくことになります。
個人再生は借金を5分の1前後の最低弁済額に減額して、3~5年間かけて分割返済していく法的整理の手続きです。
デメリットとして、任意整理と同様に信用情報機関に登録されます。また保証人に対しても請求されてしまいます。
個人再生の場合、裁判所を介した手続きですので、一部の債権者だけ手続きを行わないということができません。
そのため、任意整理とは異なり、奨学金も個人再生の対象となってしまいます。
たとえば、奨学金の金額が600万円であった場合、本人が支払うべき再生計画での返済額は120万円になります。そして、残りの480万円は保証人が支払うことになります。
4. 自己破産と奨学金
奨学金を返済する原資がない場合、自己破産を検討します。自己破産は、裁判所に対して申立てを行い、借金を帳消し(免責)にしてもらう手続きです。
もちろん、奨学金もその対象となりますので、自己破産が認められれば、奨学金も含めた借金は原則ゼロ円になります。
その代わり、保証人に対しては、奨学金の残額全額が請求されることになります。
5. 債務整理と奨学金
まとめると、奨学金は任意整理による減額の対象となりにくく、個人再生や自己破産によれば、減額または免除されます。
しかし、奨学金に保証人がついている場合は、保証人に対して請求されますので、事前に保証人にしっかりと事情を説明しておく必要があります。
また、保証人側も請求された奨学金をどのように返済していくか、返済後に発生する求償権をどのようにすべきかなども、しっかり話し合っていくポイントになります。