- 債務整理をすると、保証人に影響が出るの?
- 債務整理をしたいが、借金に保証人が付いている
- 保証人になるべく迷惑をかけずに手続きを進めたい…
0. はじめに
借金返済に関する悩みをお伺いすると、保証人や連帯保証人が付いている借金のご相談が多く見られます。
消費者金融やクレジットカード会社からの借り入れについては、無担保で連帯保証人が付いていない場合がほとんどです。
しかし、街金からの借金や、住宅ローンや医療ローン、学生時代の奨学金などについては、保証人が付いていることが少なくありません。
弁護士が債務整理を行うと、保証人や連帯保証人に迷惑がかかるのではと心配する声も多く聞かれます。
そこで、今回は債務整理の各手続きが保証人らに与える影響について、解説していきましょう。
1. 債務整理が与える保証人や連帯保証人への影響
借金の保証人は、保証人が複数いない限り、主債務者(借金をした当人)が返済できない場合に、主債務者と同額の返済義務を負います。
また、連帯保証人は、常に主債務者と同額の返済義務を負います。
そのため、借金を返済できずに債務整理をする場合、金融機関は主債務者から保証人らに請求することになります。
つまり、保証人が付いている借金について債務整理を行うと、保証人や連帯保証人への請求は避けられません。
ただし、債務整理のどの手続きを選択するのかによって、保証人らに対する影響が大きく変わってきます。
2. 任意整理を選択した場合
債務整理の手続きのなかで、保証人らに対する影響が最も小さいのが任意整理です。
保証人や連帯保証人が付いている借金の債権者に対して、弁護士が受任通知(弁護士介入通知)を送ると、債権者である金融機関から、保証人らに対して一括または分割で残債務の返済が請求されることになります。
しかし、任意整理の手続きは、債務整理を行う金融機関を自由に選ぶことができます。
つまり、保証人らの付いている借金について任意整理を行わなければ、返済に延滞ない限り、保証人らに対して請求されません。
3. 自己破産や個人再生(民事再生)を選択した場合
弁護士から債権者である各金融機関に対して受任通知が送られた場合、あるいは、裁判所から破産手続開始決定や再生手続開始決定の通知が届いた場合、その借金の返済義務は保証人らに移ります。
そして、ほとんどの金融機関は保証人らに残債務の一括返済を迫るでしょう。
(1)金融機関からの請求に保証人が返済した場合
保証人らが金融機関からの一括返済に応じた場合、その債務は完済したことになります。その代わり、保証人らは主債務者に対して求償権を取得し、金融機関に代わって新たな債権者となります。
そのため、主債務者は、保証人らが主債務者の代わりに返済した金銭を主債務者に対して返済しなければなりません。
この点、保証人らが求償権を放棄しない限り、主債務者と保証人らとの関係は、配当がある場合は配当が行われ、配当がない場合は免責される(自己破産)、他の債権者と同様に減額した借金を原則3年かけて返済していく(個人再生)という扱いとなります。
保証人らの立場からすれば、主債務者が自己破産または個人再生の手続きを選択した場合、自身が肩代わりして返済した金銭が全額戻ってくることはないでしょう。
(2)金融機関からの請求に保証人が返済できない場合
保証人らが、金融業者からの一括返済に応じられない場合、保証人も債務整理を検討せざるを得なくなります。
なぜなら、保証人らに対して訴訟を起こされ、給与や預貯金などの財産に差し押さえ(強制執行)をされる危険があるからです。
4. 保証人や連帯保証人にかける迷惑を回避するには
以上のように、保証人らがついている借金について債務整理を行う場合、安易に自己破産や個人再生を選択すると、保証人らに迷惑をかけることは避けられません。
保証人らに対する迷惑を回避するためには、任意整理の手続きを選択する必要があります。
任意整理は、裁判所を介さない手続きですので、すべての債権者に対して手続きを行う必要性はありません。
つまり、任意整理では保証人らが付いている借金をその対象から外せるため、債権者である金融機関から保証人らへ請求されることはありません。
もちろん、負債総額によっては、任意整理できない場合もあります。その際には、保証人に対して事前に事情を説明しておくべきでしょう。