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自己破産をすると、すべての財産が処分されるのですか?

自己破産をすると、すべての財産が処分されるのですか?の相談内容イメージ

自己破産をするとこれまでの借金が帳消しとなり、返済する必要がなくなります。
その代わりに、自己破産する人(破産者)が所有していた財産をお金に換えて、可能な限り債権者に返済しなければなりません。

このような、破産によって処分の対象になる財産を「破産財団」といいます。
法律上は「破産者が破産手続開始の時において有する一切の財産」が破産財団にあたると規定されています(破産法第34条1項)。

つまり、原則として破産の手続きが開始した時点で、破産者が持っているすべての財産が処分の対象となります。
ただし、生活必需品などは例外とされ、自己破産しても残すことができます。このような、破産後にも残すことができる財産を「自由財産」といいます。

1. 処分の対象になる「破産財団」にあたる財産とは
次のような条件に当てはまる財産は、破産財団として扱われます。

  1. 金銭に替えられる価値がある
  2. 破産開始手続きが開始する時点で破産者が所有していた
  3. 差し押さえることが可能
  4. 99万円を超える現金
  5. 生活必需品などの自由財産に該当しない

これらの条件に当てはまる動産や不動産など、様々な財産が破産財団に該当します。

ただし、破産財団に該当する財産でも、破産者などが裁判所に「自由財産の拡張」を申し立てて、裁判所に認められれば処分する必要がありません。

なお、山奥の土地など、買い手が簡単には見つからないような財産は、いつまでも金銭に替えられず、破産の手続きが進まなくなる可能性があります。
そのような財産は破産財団から放棄され、処分の対象ではなくなります。

自由財産の拡張と破産財団からの放棄については、後ほど詳しく説明します。

2. 自己破産しても手元に残せる「自由財産」にあたる財産とは
破産者の全財産が処分されてしまうと、破産の手続きが終わった後の生活が立ち行かなくなってしまうことが考えられます。
そのため、生活に必要な財産などを「自由財産」として、破産後も手元に残すことができるのです。

具体的には、次のようなものが自由財産にあたります。

  1. 破産手続きの開始後、新たに取得した財産
  2. 99万円以下の現金(預貯金は除く)
  3. 差押えが禁止された財産
  4. 自由財産の拡張が認められた財産
  5. 破産財団から放棄された財産

2-1. 破産手続きの開始後、新たに取得した財産
処分の対象となる破産財団は「破産者が破産手続開始の時において有する一切の財産」です。
つまり、破産手続きが始まった後に手に入れた財産は自由財産にあたります。
たとえば、破産開始決定後に支給された給与や賞与、贈与された財産などです。

2-2. 99万円以下の現金
99万円を超える現金は破産財団にあたりますが、99万円以下であれば、自由財産として手元に残すことができます。
ただし、銀行などに預けている預貯金は含まれません。

2-3. 差押えが禁止された財産
破産財団にあたるのは、差し押さえることが可能な財産なので、差押えが禁止された財産は自由財産として扱われます。
たとえば、次のような財産は、差押えが禁止されています(民事執行法第131条)。

  1. 生活に欠かせない衣服、寝具、台所用具、畳、建具
  2. 1か月分の生活に必要な食料・燃料
  3. 仏像や位牌など、礼拝や祭祀に欠くことができないもの
  4. 義手や義足など、身体の補足に必要なもの
  5. 農具や漁具など、仕事で欠くことができないもの

また、給与や賞与、退職金といった債権のうち、4分の3にあたる金額は差押えが禁止されています(同第152条)。
ただし、給与については手取り金額が44万円を超える場合、33万円のみ差押えが禁止されます。

さらに、退職金のうち、次に該当するものは差押えが禁止されています。

  1. 中小企業退職金共済法(いわゆる中退共)にもとづく退職金
  2. 確定給付企業年金
  3. 確定拠出年金
  4. 社会福祉施設職員等退職手当共済法にもとづく退職金

他にも、国民年金、厚生年金、生活保護給付金、児童手当など、公的な社会保障として支給されるお金も差し押さえられません。

2-4. 自由財産の拡張が認められた財産
破産財団にあたる財産でも、破産者が処分を希望しない財産について、裁判所に「自由財産の拡張」を申し立て、裁判所が認めれば処分を免れます。

どのような財産に対して自由財産の拡張を認めるかは、裁判所が個別に判断しますが、ここでは東京地方裁判所が設けている基準を紹介します。

  1. 残高が20万円以下の預貯金(口座が複数ある場合は合算)
  2. 見込額が20万円以下の生命保険解約返戻金(複数口ある場合は合算)
  3. 処分見込額(評価額)が20万円以下の自動車(ローンがある場合は処分される可能性があります)
  4. 居住用家屋の敷金債権
  5. 電話加入権
  6. 支給見込額の8分の1相当額が20万円以下である退職金債権
  7. 支給見込額の8分の1相当額が20万円を超える退職金債権の8分の7相当額
  8. 家財道具

退職金については、見込額が160万円以下だと全額が処分を免れます。
160万円を超える場合は、8分の7の金額が処分を免れるのです。

ここで説明した基準は、あくまでも東京地裁が設けた独自のものです。
裁判所によって基準が異なりますので、自由財産の拡張を認めて欲しい財産がある場合は弁護士に相談しましょう。

2-5. 破産財団から放棄された財産
破産財団にあたる財産でも、処分費用が高額になってしまう、買い手が見つからないといった事情で、金銭に替えるのが難しい財産があります。

たとえば、破産者が100万円の価値がある不動産を持っていた場合、本来はその不動産を売却し、得られたお金を債権者への返済に充てることになります。
ただし、その不動産が過疎地にあるような場合、買い手がすぐに見つからない可能性があります。

このようなケースでは、買い手が見つかるのを待っていると破産手続きがいつまでも終了しないため、破産財団から除外(放棄)して、自由財産として扱うことになるのです。

3. 自己破産で処分したくない財産がある場合は弁護士に相談を
自己破産の手続きを進める上で、基本的に所有している全ての財産が破産財団として処分の対象となります。
何が自由財産にあたるかを判断するには法的な専門知識が必要です。

また、本来は破産財団となる財産についても、自由財産の拡張により処分を免れるためには、裁判所に申し立てて、認められなければなりません。

もし、処分したくないからといって、破産財団にあたる財産を隠したり、第三者に譲渡したり、譲渡したと見せかけたりすると、詐欺破産罪が成立して処罰される可能性もあります(破産法第265条)。

どのような財産が破産財団や自由財産にあたるかは勝手に判断せず、弁護士に相談するようにしましょう。

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